青色事業専従者給与の要件や注意点
事業主が生計を一にしている配偶者や親族に給与を支払うことがありますが、同じ世帯内での支払いを必要経費と認めてしまうと所得分散ができ、累進課税を回避することができてしまいます。
それを防止するため、同じ世帯内での支払いは原則として必要経費にはできないことになっております。
ただし、青色申告者は事業と家計との区別ができていると考えられるので、一定の要件を満たした青色事業専従者への給与支払いについては特例で必要経費として認めています。
青色事業専従者とは
青色専従者の要件
青色専従者とは下記要件をすべて満たす者をいいます。
①青色申告者と「生計を一」にする配偶者その他の親族であること
②その年の12月31日現在で年齢が15歳以上であること
③その年を通じて6月を超える期間(一定の場合には事業に従事することができる期間の2分の1を超える期間)、その青色申告者の営む「事業に専ら従事」していること
「生計を一」とは
「生計を一」とは、必ずしも同居している必要はなく、親族間で常に生活費や学費等を送金している場合等も含まれます。
基本的に同居していたら「生計を一」となりますが、同居していても、明らかに互いに独立した生活を営んでいると認められる場合は「生計を一」とはなりません。
「事業に専ら従事」とは
「事業に専ら従事」する期間に含まれない期間については所得税法施行令165条第2項に定めれておりますが、「専ら従事」とはどういった場合なのかについては定めがありません。
実務上は、国税不服審判所の平成17年3月17日裁決が参考になります。
「専ら従事」とは、それぞれの事業内容、配偶者その他の親族の職務の内容等により、親族等が従事すべき時間において、その時間のほとんどの時間従事しているか、あるいは従事し得る状態をいうものとしており、その判断に当たっては、事業主の事業の態様及び親族等が従事した事務の態様、時間、性質等を勘案して判断すべきである。
としています。
また、関連法人の役員を兼務している場合には、所得税法施行令165条第2項2号括弧書きの「その職業に従事する時間が短い者その他当該事業に専ら従事することが妨げられないと認められる者」に該当しないとし青色専従者として認められない事例や、関連法人の代表取締役を兼務していても、関連法人での事務量がわずかであることから、専ら従事することの妨げにならないとして青色専従者として認められた事例があり、実質的な検討が必要となります。
「青色専従者給与に関する届出書」の提出期限
提出期限は、青色事業専従者への給与額を必要経費とする年の3月15日までとされております。
ただし、その年の1月16日以後、
新たに事業を開始した場合や、新たに専従者がいることとなった場合には、その開始した日や専従者がいることとなった日から2ヶ月以内に届出書を提出する必要があります。
注意点
青色専従者給与として必要経費に算入するためには、届出書に記載されている方法により実際に支払われ、記載されている金額の範囲内の金額でなければなりません。
また、金額は労務の対価として相当であると認められるものが必要経費に算入でき、不相当に高額な場合は、適正額を超える部分は必要経費に算入することができません。
相当であるか否かは下記事項を考慮して判断されます。(所得税法施行令164条第1項)
①労務に従事した期間、労務の性質及びその提供の程度
②他の使用人の給与及び同種同規模の事業に従事する者の給与の状況
③事業の種類・規模及び収益の状況
青色専従者給与の未払い
青色専従者給与の未払いについては原則として必要経費に算入することは認められませんが、未払いになったことについて相当の理由(例えば資金繰りの関係等)があり、帳簿に記載され、短期間に現実に支払いが行われているような場合には必要経費に算入できると考えられます。
(以下、参考条文等)
所得税法施行令
第164条 青色事業専従者給与の判定基準等
法第57条第1項(事業に専従する親族がある場合の必要経費の特例等)に規定する政令で定める状況は、次に掲げる状況とする。
一 法第57条第1項に規定する青色事業専従者の労務に従事した期間、労務の性質及びその提供の程度
二 その事業に従事する他の使用人が支払を受ける給与の状況及びその事業と同種の事業でその規模が類似するものに従事する者が支払を受ける給与の状況
三 その事業の種類及び規模並びにその収益の状況
2 法第57条第2項に規定する書類を提出した居住者は、当該書類に記載した事項を変更する場合には、財務省令で定めるところにより、その旨その他必要な事項を記載した書類を納税地の所轄税務署長に提出しなければならない。
第165条 親族が事業に専ら従事するかどうかの判定
法第57条第1項又は第3項(事業に専従する親族がある場合の必要経費の特例等)に規定する居住者と生計を一にする配偶者その他の親族が専らその居住者の営むこれらの規定に規定する事業に従事するかどうかの判定は、当該事業に専ら従事する期間がその年を通じて6月をこえるかどうかによる。ただし、同条第1項の場合にあつては、次の各号のいずれかに該当するときは、当該事業に従事することができると認められる期間を通じてその2分の1に相当する期間をこえる期間当該事業に専ら従事すれば足りるものとする。
一 当該事業が年の中途における開業、廃業、休業又はその居住者の死亡、当該事業が季節営業であることその他の理由によりその年中を通じて営まれなかつたこと。
二 当該事業に従事する者の死亡、長期にわたる病気、婚姻その他相当の理由によりその年中を通じてその居住者と生計を一にする親族として当該事業に従事することができなかつたこと。
2 前項の場合において、同項に規定する親族につき次の各号の一に該当する者である期間があるときは、当該期間は、同項に規定する事業に専ら従事する期間に含まれないものとする。
一 学校教育法第1条(学校の範囲)、第124条(専修学校)又は第134条第1項(各種学校)の学校の学生又は生徒である者(夜間において授業を受ける者で昼間を主とする当該事業に従事するもの、昼間において授業を受ける者で夜間を主とする当該事業に従事するもの、同法第124条又は同項の学校の生徒で常時修学しないものその他当該事業に専ら従事することが妨げられないと認められる者を除く。)
二 他に職業を有する者(その職業に従事する時間が短い者その他当該事業に専ら従事することが妨げられないと認められる者を除く。)
三 老衰その他心身の障害により事業に従事する能力が著しく阻害されている者