確定申告 夫が家賃等を支払っていても経費にできる?
妻(事業主)が自宅の一部を事業で利用しており、家賃の支払いや固定資産税等といった経費を妻自身ではなく夫が第三者に支払っている場合、妻が直接支払っていないので妻の事業の経費にはならないのでしょうか。
結論から申し上げますと、「同一生計(財布が同じ)の親族」である夫が第三者に支払っている場合は妻が直接支払っていなくても事業で利用している部分については経費になります。
妻が夫に事業で利用している家賃部分を支払っていなくても(無償でも)、妻の経費として計上することができます。
同一生計の親族とは?
・同居している親族(6親等以内の血族及び3親等以内の姻族)であれば、明らかに独立した生活(別生計)の場合を除き、「同一生計」となります。
・同居していない親族でも、常に生活費の送金を行っている場合は「同一生計」となります。
簡単に言えば、同居していなくても生活費が同じ財布から出ていれば「同一生計」となります。
(所得税法基本通達2-47を参照)
なぜ直接妻が支払っていなくても経費にできるの?
所得税法上、個人単位課税を原則としているので妻(個人事業主)が支払っている場合のみ経費として計上でき、夫が支払っている場合は妻の経費として計上できないはずです。
ただ、同じ財布の「同一生計の親族」の間でもその原則を貫くとどうるなるでしょうか?
夫所有の建物に妻が家賃を払っている場合、同じ財布でのやり取りにも関わらず利益操作が可能となります。利益操作ができないように「同一生計の親族」の間での支払いは経費として認められないこととしております。
そこで、所得税法上の例外として、「同一生計の親族」が第三者に支払った経費は、同じ財布からの支払いですので、個人事業主(妻)の経費として認めております。(世帯単位課税)
妻(事業主)が事業として利用している部分が経費となりますので、夫が家賃を支払っている場合も家事按分する必要がありますのでご注意ください。
根拠条文等
個人事業主が「同一生計の親族」に対して支払った対価が経費とならない規定
所得税法第56条
(事業から対価を受ける親族がある場合の必要経費の特例)
居住者と生計を一にする配偶者その他の親族がその居住者の営む不動産所得、事業所得又は山林所得を生ずべき事業に従事したことその他の事由により当該事業から対価の支払を受ける場合には、その対価に相当する金額は、その居住者の当該事業に係る不動産所得の金額、事業所得の金額又は山林所得の金額の計算上、必要経費に算入しないものとし、かつ、その親族のその対価に係る各種所得の金額の計算上必要経費に算入されるべき金額は、その居住者の当該事業に係る不動産所得の金額、事業所得の金額又は山林所得の金額の計算上、必要経費に算入する。この場合において、その親族が支払を受けた対価の額及びその親族のその対価に係る各種所得の金額の計算上必要経費に算入されるべき金額は、当該各種所得の金額の計算上ないものとみなす。
妻(個人事業主)が夫に対価を支払っていない場合には、妻(個人事業主)の経費にできないように読み取れます。
言いかえれば、妻(個人事業主)が夫に対価を支払っている場合のみ、妻(個人事業主)の経費とできるように読み取れますが、
下記所得税法基本通達56-1で妻(個人事業主)が「同一生計の親族」に対価を支払っていない場合(無償)でも妻(個人事業主)が使用している場合には経費として認める旨を明らかにしております。
(親族の資産を無償で事業の用に供している場合)
56-1 不動産所得、事業所得又は山林所得を生ずべき事業を営む居住者と生計を一にする配偶者その他の親族がその有する資産を無償で当該事業の用に供している場合には、その対価の授受があったものとしたならば法第56条の規定により当該居住者の営む当該事業に係る所得の金額の計算上必要経費に算入されることとなる金額を当該居住者の営む当該事業に係る所得の金額の計算上必要経費に算入するものとする。