中小企業向け所得拡大促進税制(賃上げ促進税制) 控除率が最大40%で節税効果大!【令和4年度税制改正】
中小企業向け所得拡大促進税制は、簡単にいうと、給与・賞与などが前期と比較して1.5%以上増加するとその増加額の15%を税額から控除できる制度です。
例えば前期の給与・賞与額等が1,000万円、当期の給与・賞与額等が1,200万円でしたら、30万円(200万円×15%)の税額を節税することができます。税額から直接控除できるので節税に与える影響は大きいです。
控除率の上乗せ措置があり、
①増加率が2.5%以上増加している場合は、追加で15%控除率が上乗せされます。
また、②教育訓練費が前期と比較して10%以上増加している場合は追加で15%控除率が上乗せされます。
給与・賞与等などが前期と比較して2.5%以上増加し、かつ教育訓練費が10%以上増加している場合は、40%(15%+15%+10%)の控除率になりますので、節税に与える影響はとても大きいです。
改正されるまでは最大25%の控除率でしたので、令和4年税制改正で最大控除率が15%UPし節税効果が高くなりました。
上記の例ですと、①と②の両方の上乗せ措置を適用すると80万円(200万円×40%)の税額を節税することができます。
ただし、いずれの場合も控除額は当期の所得に対する法人税額又は所得税額の20%が上限となります。
令和4年度税制改正でも令和3年税制改正と同様に継続雇用者(前期と当期在籍している従業員のみ対象)の要件はなく、前年度と当期の給与・賞与等を比較するので集計がしやすく適用の判断がシンプルです。
継続雇用者を比較しないので、当期に従業員を新規雇用した場合は適用が受けやすくなりますが、一方で、前期退職した従業員がいた場合は適用が受けにくくなります。
中小企業向け所得拡大促進税制を適用するための前提
中小企業者等で青色申告者が対象となっておりますので、白色申告の場合は、適用を受けることができません。また、前期の給与・賞与等を比較するので、新規設立で前事業年度がない場合は適用できないです。
中小企業者等とは
以下のいずれかに該当する企業をいいます。
・資本金や出資金が1億円以下の法人(注1)
・資本等を有しない法人で常時雇用人数が1,000人以下の法人
・常時雇用の従業員が1,000人以下の個人事業主
・協同組合等
(注1)同一の大規模法人から2分の1以上の出資、2以上の大規模法人から3分の2以上の出資、前3事業年度の所得の平均15億円を超える法人は除きます。
役員報酬や親族の給与は対象になる?
結論から申しますと、国内雇用者が対象ですので役員報酬や親族の給与は対象になりません。
国内雇用者とは、法人又は個人事業主の使用人のうち、法人又は個人事業主の国内に所在する事業所につき作成された賃金台帳に記載された者です。パート、アルバイト、日雇労働者も含みますが、使用人兼務役員を含む役員及び役員の特殊関係者、個人事業主と特殊の関係のある者は含まれません。
特殊関係者は法人の役員または個人事業主の親族(6親等以内の血族、配偶者、3親等以内の姻族が該当)を指し、役員又は個人事業主と婚姻関係と同様の事情にある者、当該役員または個人事業主から生計の支援を受けいている者も特殊関係者に含まれす。
役員報酬や親族の給与等を増やしても所得拡大促進税制は適用できないのでご注意ください。
その他の改正点
教育訓練費の上乗せ措置の適用を受ける場合には、教育訓練費の明細を記載した書類を確定申告書等に添付する必要がありましたが、令和4年税制改正により、確定申告書等に添付する必要はなく、保存すれば足りるようになりました。(添付要件から保存要件へ変更となりました。)
適用年度
令和4年4月1日から令和6年3月31日までの間に開始する各事業年度に適用されます。
1年を事業年度とする法人の場合は、令和5年3月期からの適用となります。個人事業主は令和5年度から適用となります。
3月決算法人の場合、令和4年3月期は令和3年税制改正の所得拡大促進税制が適用されます。
注意点
適用するにあたり、事前の認定や申請は必要ありません。
ただし、租税特別措置法の特例税制ですので、期限内の確定申告書に適用額明細書等の必要な書類を添付して申告しない限り適用できません。更正の請求や明細書の事後提出は認められていないので注意が必要です。
まとめ
中小企業向け所得拡大促進税制(賃上げ促進税制)は税額控除の控除率が最大40%と非常に節税効果が高いです。賃上げや新規雇用をし、要件を満たしたら適用しない手はございません。
ただ、賃上げや新規雇用は固定費となり企業の資金繰りに負担となる場合もありますので、中長期的な視点で経営に与える影響を考慮して行う必要がございます。慎重にご検討ください。
上記内容は、中小企業向け所得拡大促進税制についての概要について簡略して説明しております。実際に申告する場合は税理士又は税務署にご確認の上、適用することをお勧めいたします。