未払いの決算賞与は注意!


業績が好調な期に、通常の賞与とは別に従業員のモチベーションアップや節税対策の目的で決算賞与を支給することがあります。

今期の決算日までに決算賞与を従業員に支給(支払い)している場合は今期の費用になり特に問題になりません。

ただ、資金繰り等の影響から今期ではなく翌期に支給する場合があります。決算賞与が、税法上、翌期の費用(損金)ではなく、当期の費用(損金)として認めてもらうためには要件があります。

未払いの決算賞与が今期の費用(損金)と認められるための3要件

①決算日までに、従業員ごとに支給額を明示して通知すること

②決算日から1ヶ月以内に通知した金額を支払っていること

③決算賞与の金額を経理処理(損金経理)していること

以下注意点等を記載いたします。

①決算日までに、従業員ごとに支給額を明示して通知すること

支給を受けるすべての従業員に対して通知を行う必要があります。

支給対象者の一部にだけ通知した場合、通知していない人の賞与額が費用(損金)として認められないだけでなく、通知をした人も含めた決算賞与全額が費用(損金)として認められません。

翌期の賞与支給日に在職する従業員のみに決算賞与を支給する旨を通知している場合は、支給額を通知しても「通知」には該当しないことになっている(法基通9-2-43)ので、決算賞与全額が費用(損金)として認められません。

決算日に未払いの決算賞与を計上するためには、決算日までに債務が確定している必要があります。

支給日に在職する従業員のみに決算賞与を支給する旨の通知した場合は、決算日までに決算賞与の債務が確定していないことになるので費用(損金)として認められておりません。

「通知」に、賞与支給日に在職する従業員のみに決算賞与を支給する旨の記載がなくても会社の「給与規程(賞与規程)」に「賞与支給日に会社に在籍している」ことが支給要件となっているような記載があると、決算日までに債務が確定していないことになるので、決算賞与全額が費用(損金)として認められないことになります。

定期賞与(通常の賞与)で「賞与支給日に会社に在籍している」ことを要件としている給与(賞与)規定を定めている場合は、別建てで決算賞与規定を作成し、「賞与支給日に会社に在籍している」ことを要件とする文言はいれないように注意する必要があります。

また、税務調査で決算日までに従業員に通知したことを証明できるように、従業員から確認の署名押印をもらう等、調査の際に証明できる資料を作成することをお勧めいたします。

②決算日から1か月以内に通知した金額を支払っていること

決算日から1か月以内に支給する必要があります。

例えば、3月決算の場合は、翌期の4月末までに支給する必要があり、5月に支給すると今期の費用(損金)とすることはできず、翌期の費用(損金)として処理することになります。

③決算賞与の金額を経理処理(損金経理)していること

通知した事業年度に決算賞与支給額を経理処理している必要があります。

具体的には、決算整理仕訳で支給額について決算賞与と未払金を計上することになります。

せっかく従業員のモチベーションアップや節税対策の目的で決算賞与を出したのに費用(損金)として認められず、法人税の追徴税が課されたら経営者としてはたまったものではございません。

上記の未払いの決算賞与の3要件を満たすように注意してください。

(参考)法人税基本通達

9-2-43  支給額の通知

法人が支給日に在職する使用人のみに賞与を支給することとしている場合のその支給額の通知は、令第72条の3第2号イの支給額の通知には該当しないことに留意する。

9-2-44  同時期に支給を受ける全ての使用人

法人が、その使用人に対する賞与の支給について、いわゆるパートタイマー又は臨時雇い等の身分で雇用している者(雇用関係が継続的なものであって、他の使用人と同様に賞与の支給の対象としている者を除く。)とその他の使用人を区分している場合には、その区分ごとに、令第72条の3第2号イの支給額の通知を行ったかどうかを判定することができるものとする。

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