社宅購入は節税になりますか?


経営者が個人名義ではなく、法人名義で自宅を購入(アパートやマンション購入、建物を建設等)し、経営者の自宅として使用する場合には、法人の社宅として取り扱うことになります。

個人で自宅を購入した場合は下記のような支払いが生じます。

【購入時】

 ①登録免許税

 ②司法書士報酬

 ③売買契約の印紙代

 ④不動産取得税

【毎年生じる支払い】

 ①固定資産税

 ②火災保険料、地震保険料

 ③支払利息(ローンを利用している場合)

 ④建物修繕費(修繕を行う場合)

個人で自宅を購入した場合は、上記の支払いは一切経費になりませんが、法人名義で購入した場合には全額経費となり、建物の減価償却費も毎年経費計上できるので、法人税の節税効果は非常に高いです。

生活費の一部を法人の経費にしているイメージですので節税効果が高いことは想像しやすいかと思います。

法人所有の社宅を無償で経営者(個人)に賃貸すると、現物給与となり賃料相当額が役員給与として課税されます。つまり、法人所有の社宅を無償で経営者(個人)に賃貸すると、源泉徴収や個人の所得税、住民税の対象となり、所得税等の納税額が増えてしまいます。

現物給与にならないためには、法人は経営者(役員)から毎月一定額の家賃(社宅負担金)を徴収する必要があります。

社宅負担金の金額は(1)小規模な住宅、(2)小規模な住宅以外で、かつ豪華社宅でないもの(一般の社宅)、(3)豪華社宅により異なります。

(1)小規模な住宅

小規模な住宅とは、床面積が木造家屋など(法定耐用年数が30年以下の建物)であれば132㎡以下、それ以外(法定耐用年数が30年超の建物)であれば99㎡以下の住宅となります。

マンション等の場合は小規模な住宅に該当する場合が多く、経営者(役員)から徴収する社宅負担金を最も低くすることができます。

次の①~③の合計額を賃貸料相当額として毎月役員から徴収する必要があります。

①(その年度の建物の固定資産税の課税標準額)×0.2%

②12円×(その建物の総床面積(㎡)/(3.3㎡))

③(その年度の敷地の固定資産税の課税標準額)×0.22%

賃貸料相当額を計算する際の「固定資産税の課税標準額」については、固定資産税の納税通知書や市町村の役場で固定資産課税(公課)証明書を入手することにより確認することができます。

具体的な計算例は下記となります。

【前提】

取得価格: 建物 3,500万円、土地 2,500万円

RC造住宅:90㎡

固定資産税課税標準額:建物 580万円

固定資産税課税標準額:土地 375万円

①580万円×0.2%=11,600円

②12円×(90㎡÷3.3㎡)=327円

③375万円×0.22%=8,250円

①+②+③=20,177円

購入すると6,000万円の物件に、個人では月々20,177円の負担で住むことが可能となります。

(2)小規模な住宅以外で、かつ豪華社宅でないもの(一般の社宅)

(1)と(3)に該当しない住宅は次の①~②の合計額の12分の1を賃貸料相当額として毎月役員から徴収する必要があります。

①(その年度の建物の固定資産税の課税標準額)×12%(木造家屋以外は10%)

②(その年度の敷地の固定資産税の課税標準額)×6%

(3)豪華社宅

豪華社宅とは、社会通念上一般に貸与されている社宅と認められないような住宅なことで、床面積が240㎡を超えるもののうち、取得価額、支払賃貸料の額、内外装の状況等各種の要素を総合勘案して判定されます。床面積が240㎡以下のものでもプール等や役員個人の嗜好を著しく反映した豪華なものは豪華社宅に該当することになります。

豪華社宅に該当する場合の賃貸料相当額は、時価(実勢価額)となります。

豪華社宅に該当する場合は、節税効果がないので、豪華社宅にならないよう床面積を240㎡以下にするなどの注意が必要です。

社宅の注意点

法人で社宅を購入する方が一般的には節税面では有利なります。

ただし、資金調達面や、住宅の売却予定、相続対策などを考慮すると必ずしも法人で社宅を購入する方が有利になるとは限らない場合があります。法人で社宅購入を検討される場合は、法人税、所得税、相続税の税金に詳しい税理士にご相談の上、ご検討されることをお勧めいたします。

法人で社宅を購入する場合の一般的なデメリットを下記に記載いたしますのでご参考にしてください。

・フラット35などの住宅ローンを利用することができない。(法人で借入の場合だと10年から20年の事業ローンで借入期間が短く、一般的に金利が高くなります。)

・経営者が住宅ローン控除を利用できない。

・個人名義で購入し、住宅を売却する場合は、「居住用財産の3,000万円の特別控除」を受けることができるが、法人で売却する場合には、そのような特別控除を利用できない。

・法人では5年超保有の軽減税率(所得税15%、住民税5%)や10年超所有の軽減税率等が利用できない。

・法人では団体信用保険に加入できない。(法人でも生命保険を利用すれば同じ機能は果たせます。)

経営者(役員)が所有している自宅を法人に売却して社宅にすることも考えられますが、

会社法上の手続や、売買価格の算定、住宅ローンの有無等、手続きが複雑であり、税務上の注意点も多いので専門家にご相談の上、実施することをお勧めいたします。

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