事業再構築補助金、ものづくり補助金、持続化補助金、IT補助金等に税金がかかる場合は圧縮記帳を利用しよう!
事業再構築補助金、ものづくり補助金、小規模事業者持続化補助金、IT補助金等(以下、補助金)といった補助金で固定資産を取得した場合には圧縮記帳を行うことで税金の支払いを遅らせることができます。(課税の繰延べ)
圧縮記帳を行わない場合、補助金の交付を受けた事業年度に収益として計上されます。
収益の全額が課税の対象となり税金を支払うことになります。この場合、税金の支払いを補助金の一部で行うと当初予定していた固定資産の取得ができなくなる可能性があります。
固定資産の取得ができなくなると補助金を交付した趣旨に反するので、直ちに課税はせずに、課税の繰延べができるよう圧縮記帳の適用が認められています。
圧縮記帳を行わない場合
【設例】自己資金200円と補助金300円の交付を受け固定資産500円を取得する場合(税率40%)
補助金は国庫補助金受贈益として300円の収益として計上される。費用がゼロの場合、300円×40%=120円を税金として支払うことになり、380円(残金180円+自己資金200円)では固定資産を取得できなくなり、補助金の趣旨に反してしまいます。
圧縮記帳とは
圧縮記帳とは、補助金の収益金額と同額だけ固定資産を減額して費用を発生させ、相殺する方法です。
【①補助金受取時】
(借)現金 300 (貸)補助金受贈益 300
【②固定資産取得時】
(借)固定資産 500 (貸)現金 500
【③圧縮記帳時】
(借)圧縮損 300 (貸)固定資産 300
①の補助金受贈益300円と③の圧縮損300円が相殺され、課税が生じなくなります。
ただし、③で固定資産から300円控除されるので、固定資産の帳簿価額が200円となります。圧縮記帳を行うことにより、固定資産が減額されたことになるので、圧縮記帳を行わない場合と比較して、毎年の償却額が減少することになります。
定額法で法定耐用年数を5年とし、償却した場合、毎年の償却が下記のように異なります。
【圧縮記帳を適用していない場合】
(借)減価償却費 100 (貸)現金 100
固定資産取得価額500円÷5年=100円
5年間の償却額累計は100円×5年=500円
【圧縮記帳を適用した場合】
(借)減価償却費 40 (貸)現金 40
固定資産取得価額(500円-300円)÷5年=40円
5年間の償却額累計は40円×5年=200円
圧縮記帳を適用した場合、圧縮記帳を適用していない場合と比較して、毎年差引60円だけ償却額が過小となり、その状態が5年間続くので、利益(課税所得)が5年間累計で300円(60円×5年間=300円)増加してしまうことになります。
圧縮記帳を適用した場合、固定資産を取得した初年度に利益を300円(圧縮損)減少させる効果がありますが、その効果は償却期間を通じて解消(減殺)されていきます。
5年間を通したトータルの損益は同額となりますので、圧縮記帳は課税の免除ではなく、“課税の繰延べ”ということになります。
圧縮記帳の会計処理方法
圧縮記帳の会計処理方法には①直接減額方式と②圧縮積立金方式があります。
①の方法は上記【設例】で説明をしたような仕訳例となります。
①の仕訳例でも分かる通り、仕訳はシンプルですが、固定資産を直接減額するので、資産価値が減少していないのに、固定資産の簿価が減少する点や、圧縮記帳を適用しない場合と比較して毎年の減価償却費が減少してしまい、損益計算書に影響を与えてしまうという問題点があります。
そういった問題が生じないようにするために②圧縮積立金方式があります。
②の方法は法人税の申告書で圧縮損相当額を調整することになります。
①②も税額に与える影響は同じですのでどちらを採用しても問題はありません。
中小企業ではシンプルな①の方法が採用されることも多いですが、金融機関での融資を検討している場合は、決算書(特に損益計算書)に影響を与えない②の方法を採用したほうが良いかと思います。
圧縮記帳の要件等
圧縮記帳を適用するためには要件があります。主な要件は下記に記載しますが、適用する場合は税務署や税理士に確認されてください。
・補助金の交付を受けており、補助金のも目的に適合した固定資産の取得または改良を行っていること。
・補助金の返還を要しないことが確定していること。
・圧縮記帳の経理処理をし、原則として、確定申告書の別表十三(一)「国庫補助金等、工事負担金及び賦課金で取得した固定資産等の圧縮額等の損金算入に関する明細」を所轄税務署へ提出すること。
ちなみに圧縮記帳は青色申告法人だけでなく白色申告の法人でも適用可能です。
まとめ
事業再構築補助金、ものづくり補助金、小規模事業者持続化補助金、IT補助金等(以下、補助金)といった補助金で固定資産を取得した場合には圧縮記帳を適用し、税金を繰延べることができるのでぜひ活用して頂ければと思います。
少し専門性が高いので「補助金の交付で固定資産を取得した場合は圧縮記帳というもので課税の繰延べができる」ことだけでも覚えていただけたらと思います。
繰越欠損金がある場合には、必ずしも圧縮記帳を適用することが有利にならない場合もございます。
また圧縮記帳を適用する場合は、少し複雑ですので、税務署や税理士に相談して処理することをお勧めいたします。
上記記事は法人について記載いたしましたが、個人事業主でも圧縮記帳と同様の処理を行うことが認められております。補助金で固定資産を取得した場合はご検討ください。