後期高齢者医療制度 上場株式等の譲渡損失の繰越控除で医療費の負担が1割から3割負担になる場合も!


上場株式等の株取引の際に源泉徴収ありの特定口座を利用している方は、確定申告は原則不要です。

源泉徴収ありの特定口座を利用していても上場株等の売買で損失が出た場合、翌年以降3年間にわたり損失を繰り越すために、確定申告を行うことがあります。損失を繰り越せるというメリットはありますが、後期高齢者医療制度の場合、医療費の窓口負担割合が1割から3割負担になる場合もありますので、注意が必要です。

75歳になると国民健康保険や協会けんぽ等から、後期高齢者医療保険に移行します。後期高齢者医療保険に移行すると医療費の窓口負担割合(自己負担割合)は、1割が原則とされています。

ただし、「現役並みの所得者」は、医療費の窓口負担割合(自己負担割合)が3割となります。

「現役並みの所得者」とは

「現役並みの所得者」とは、住民税課税所得が145万円以上ある後期高齢医療の被保険者及びこの方と同じ世帯にいる被保険者の方が該当します。同一世帯に、住民税課税所得が145万円以上の被保険者がいれば、その他の被保険者はすべて「現役並みの所得者」となります。

ただし、「現役並みの所得者」に該当しても、下記要件のいずれかに該当した場合は、「基準収入額適用申請書」を市町村の役所に提出し、広域連合が認めると、窓口負担割合(自己負担割合)が1割となります。

・同じ世帯に被保険者が1人で、収入が383万円未満

・同じ世帯に被保険者が複数で、収入の合計額が520万円未満

・同じ世帯に被保険者が1人で、収入が383万円以上でも、70歳以上75歳未満の方がいる場合は、その方の収入を合わせて520万円未満

ここで重要なのは、金額の判断基準が『所得』ではなく『収入』というところです。

例えば、株取引きの場合ですと、『所得』は、株の売却額から株の取得費を控除した金額となり、売却額>取得費でないと『所得』は発生しません。

一方、『収入』だと株の売却額が『収入』となります。売却額<取得費で損失が発生していても株の売却額が『収入』となります。

仮に、株の年間売却額が1,000万円、取得費が1,200万円の場合、譲渡損失は200万円で『所得』はマイナス、『収入』は1,000万円ということになります。

上場株式等の取引の際に源泉徴収ありの特定口座を利用している方は、確定申告は原則不要です。確定申告をしない場合(申告不要の場合)は、株取引の『収入』、『所得』は発生していないことになるので、後期高齢者医療保険の窓口負担割合に影響することはありません。

所得税と住民税 の課税方式の選択

ところで、上場株式等の所得については、所得税と住民税で異なる課税方式を選択することができます。

源泉徴収ありの特定口座を利用している場合でも、所得税で上場株式等の譲渡損失の繰越控除を受けるために確定申告で申告分離課税を選択し、住民税では申告不要を選択することができます。

住民税では申告不要を選択すると株の売却時の収入は含まれないので、住民税課税所得が145万円以上あっても、「基準収入額適用申請書」を役所に提出し、広域連合が認めると、窓口負担割合は1割となります。

上場株式等の譲渡損失の繰越控除を受けるために確定申告を行い、住民税で申告不要を選択しなかった場合は、住民税でも申告分離課税を選択することになり、住民税の課税所得や収入に影響します。住民税で申告分離課税を選択することになってしまうと、住民税課税所得が145万円以上になり、基準収入額を超えると後期高齢者医療保険の窓口負担割合が3割になってしまいます。

住民税で申告不要を選択するには

所得税で申告分離課税を選択し、住民税では申告不要を選択するには、令和2年度分までは、「上場株式等の所得に関する住民税申告不要等申出書」等を市民税・県民税の納税通知書が送達される日までの間に各市町村の役所に提出する必要あります。(提出期限は役所によって異なる場合がありますので、役所に期限の確認を行ってください。)

上場株式等の所得に関する住民税申告不要等申出書_那覇市

令和3年度の税制改正で、令和3年分以後の確定申告では、特定配当等及び特定株式等譲渡所得金額に係る所得の全部について申告不要とする場合に、確定申告だけで住民税において申告不要を選択できるよう住民税に係る附記事項が追加されます。これによって、手続きは簡易化されると思いますが、各市町村によって異なることも考えられますので、住民税で申告不要を選択する場合は、各市町村に必ず確認することをお勧めします。

確定申告で節税のために上場株式等の譲渡損失の繰越控除を行うと、後期高齢者医療制度の医療費の窓口負担割合が3割負担になる場合があります。後期高齢者医療制度の被保険者の方で、上場株式等の譲渡損失の繰越控除を行う場合は慎重にご検討ください。

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