自宅兼事務所を経費にすると住宅ローン控除が利用できなくなる!?
個人事業主(フリーランス)の方で、持ち家である自宅を一部事務所として利用しているので建物自体の減価償却費を経費として計上し、節税する方法がございます。
その際、自宅(居住用部分)と事務所(事業用部分)の割合を設定して、事務所(事業用部分)の割合部分を必要経費として計上します。
住宅ローン控除を適用していなければ、事務所(事業用部分)の割合を特に気にしなくても問題ございません。
ただ、事務所(事業用部分)の割合が多いと住宅ローン控除が適用できなくなりますのでご注意ください。
住宅ローン控除は建物全体の床面積の50%以上が居住用部分でなければ適用できません。
税法上、「床面積の2分の1以上の部分が専ら自己の居住の用に供するものであること。」と定められています。
事業用部分を50%超にし、建物自体の減価償却費を必要経費として計上すると住宅ローン控除が適用できなくなるのでご注意ください。
事業用部分が50%以下の場合は、居住用部分の割合分のみ住宅ローン控除が適用できます。
例えば下記の条件の場合
・住宅ローンの残高2,000万円(取得対価の額と同額とする。)
・居住用部分の割合が70%
・住宅ローン控除率1%
①2,000万円×70%=1,400万円
②1,400万円×1%=140,000円・・・住宅ローン控除額
というふうに計算されます。
ただし、事業用部分の割合が10%以下の場合いいかえると居住用部分の割合が90%以上の場合は、居住用部分の割合が100%として住宅ローン控除の計算を行ってもよいということになっておりますので、住宅ローン控除も100%受けることができます。(租税特別措置法41-29)
事業用部分の減価償却費を必要経費に計上する場合の住宅ローン控除の関係は下記表となります。
事業用部分割合 | 住宅ローン控除適用 |
10%以下 | 全額住宅ローン控除可能 |
10%超~50%以下 | 居住用部分に応じた割合 |
50%超 | 住宅ローン控除適用不可 |
居住用財産の3,000万円控除 との関係
将来自宅を売却する際にも事業用部分の割合と居住用部分の割合が問題となる場合があります。
将来自宅を売却し、売却益(譲渡所得)が出る場合は「居住用財産の3,000万円控除」の特例を利用することになりますが、「居住用財産の3,000万円控除」の特例は居住用部分の割合しか特例を利用することができません。
例えば、売却益(譲渡所得)が1,000万円の場合、事業用部分の割合が30%でしたら、
300万円の売却益(譲渡所得)については特例を受けることができなくなります。
ただし、「居住用財産の3,000万円控除」の特例についても住宅ローン控除と同様に居住用部分の割合が全体の90%以上であるときは、全体を居住用に使っていたものとしてこの特例を受けることができます。(措通31の3-8)
(参考:租税特別措置法41-29)
41-29 措置法令第26条第6項の規定は、その家屋又は当該家屋の敷地の用に供される土地等のうちにその者の居住の用以外の用に供される部分がある場合に適用されるのであるが、41-27により計算したその者の居住の用に供される部分の床面積若しくは土地等の面積又は増改築等に要した費用の額がその家屋の床面積若しくは土地等の面積又は増改築等に要した費用の額のおおむね90パーセント以上に相当する面積又は金額であるときは、同項の規定にかかわらず、その家屋の床面積若しくは土地等の面積又は増改築等に要した費用の額の全部がその者の居住の用に供する部分の床面積若しくは土地等の面積又は増改築等に要した費用の額に該当するものとして措置法第41条第1項又は第6項の規定を適用することができるものとする。
(参考:措通31の3-8)
31の3-8 その居住の用に供している家屋又は当該家屋の敷地の用に供されている土地等のうち31の3-7により計算したその居住の用に供している部分がそれぞれ当該家屋又は当該土地等のおおむね90%以上である場合には、当該家屋又は当該土地等の全部がその居住の用に供している部分に該当するものとして取り扱って差し支えない。