Q5.法人成りのメリット・デメリット
Answer
法人成りのメリットやデメリットについて、下記に記載しましたのでご確認下さい。
◇メリット◆
●社会的な信用力が増大
個人事業に比べ、取引相手からの信用を得やすいです。
●融資が有利
事業とプライベートの財布も完全に別になっているため、個人事業よりは金融機関等から融資を受けやすくなります。
●個人の責任範囲が限定的
個人事業では、無限責任となり、債務に対してのすべての責任を負うことになりますが、
法人では、基本的に代表者個人は有限で責任を負いません。
ただし、代表者個人としての連帯保証があれば代表者個人も責任を負うこととなります。
●節税の為の方策が多い
⇒社長の給与を「役員報酬」として経費計上可。
⇒消費税の納付が一定の場合、2年間免除。
⇒「個人事業主の所得税」と「法人税」の税率の差
⇒青色申告の場合、欠損金を9年間繰越可(個人事業の場合は3年)
⇒支払った退職金を損金計上可。
◆デメリット◇
●会社設立時に登記の費用が発生
定款作成認証や登記手続き等の実費が発生します。
●事務処理の負担が増加
個人事業と比較すると、経理や税務申告書の作成等の手続きが複雑になります。
●交際費の経費算入額が異なる
交際費の定額控除限度額は、資本金1億円以下の法人の場合800万円、それ以外0円です。
個人事業主は、交際費について、上記のような規定は設けられていません。
●赤字でも税金の発生
法人の場合たとえ決算が赤字でも、法人住民税均等割(最低7万円)の税金がかかります。
■個人事業と法人の比較
項目 | 個人事業 | 法人 |
対外的信用 | 比較的低い | 比較的高い |
融資 | 比較的受けにくい | 比較的受けやすい |
債務責任 (代表者の債務に対する責任) |
無限(債務に 対しての責任は 代表者がすべて負う) |
有限(代表者個人は責任を 負わない。ただし、連帯保証 があれば個人も責任を負う) |
事業内容 | 自由 | 定款に定める範囲内 でのみ事業活動可 |
決算期 | 12月 | 自由に設定可能 |
事務的負担 | 比較的減少 | 比較的増大 |
設立登記費用 | かからない | かかる |
税務等の運営面 | 比較的簡単 | 比較的複雑 |
会社の厚生年金保険 | 加入できない。 国民健康保険、国民年金など |
加入できる。 社会保険料の半分は 会社の損金で落とせる。 |
社長の給料 | 経費とならない | 役員報酬は損金算入可。 さらに、給与所得控除あり。 |
支払った退職金 | 必要経費に計上できない。 代わりに「小規模企業共済」 制度があり。 |
適正額につき損金算入可 |
生命保険 | 経費にならない 所得控除で一定金額控除 (最高12万円まで) |
一定の条件のものは 損金算入可 |
繰越欠損金 | 3年 | 9年 |
課税 | 所得税(超過累進課税) | 法人税(基本的に一定) |
まとめ
上記、法人成りのメリットやデメリットを記載しましたが、税金面での影響以外にも、事務負担の増大、設立費用等のコスト増大等、節税だけを目的とした法人成りは考えない方がいいでしょう。
また、法人なりが有利となるか不利となるかの判断を下すために様々な情報を記載しましたが、それらは不確定なもので計画通りに行かないことは多々あります。
例えば、税制は政策的な要素で動くことが多く、どのように変更されるか分かりません。
直近の法人成りの判断に影響を与える税制改正としては、給与所得控除について平成25年より給与等の収入が1千5百万円を超える場合は一定額になりました。これは、所得税の増税につながります。
さらに、復興特別税の影響により、法人税は平成24年4月1日以降開始事業年度から、所得税は平成25年1月1日から税率が変更されています。
この様に毎年状況が変わる環境の下で、法人成りが常に有利になるとは限りません。
法人成りの目的は節税以外に営業面、世間の信用、将来の方向性等経営全体の観点から、いずれ実行する場合には、税務的に一番有利と思われるタイミングで法人成りをしたい、という前提で検討するのが良いパターンだと思われます。