副業でも帳簿を保存したら概ね事業所得に!?
副業による所得を雑所得ではなく、事業所得とするためには、社会通念上事業と称するに至る程度で行っており、帳簿書類を作成し、保存(7年間)すればよいことになりました。
改正された所得税基本通達35-2(令和4年10月7日公表)によれば、事業所得と認められるかどうかは、営利性、継続性、企画遂行性といった「社会通念上事業と称するに至る程度で行っているか」で判定することが明記され、
なお書きで、「帳簿書類の保存がない場合には、業務に係る雑所得に該当することに留意する。」旨が記載されました。
帳簿書類を作成・保存している場合でも、次のような①所得の収入金額が僅少と認められる場合や②所得を得る活動に営利性が認められない場合は事業と認められるかどうか個別に判断することになります。
①所得の収入金額が僅少と認められる場合
例えば、概ね3年程度、副業の収入が300万円以下で主たる収入(本業)に対する割合の10%未満の場合。
②所得を得る活動に営利性が認められない場合
その所得が概ね3年程度赤字で、かつ、赤字を解消するための取組みを実施していない場合。(赤字を解消するための取組みを実施していない場合とは、収入を増加させる、あるいは所得を黒字にするための営業活動等を実施していない場合をいいます。)
ただし、収入金額が300万円を超え、かつ事業所得と認められる事実がある場合は、帳簿書類の保存がない場合でも事業所得と認められます。
事業所得と業務に係る雑所得等の区分
帳簿書類を作成・保存しておらず、雑所得に該当する場合は下記のようなデメリットが生じる可能性がありますので注意が必要です。
青色申告の特別控除が利用できない。
「事業所得」で青色申告を行っていた方は、雑所得となることで、青色申告の特別控除(最大65万円控除)が利用できなくなりますので所得税・住民税が増加することになります。
3年間の損失の繰り越し控除が利用できない。
「事業所得」で青色申告を行っていた方は、翌年以降3年間に損失(赤字)を繰り越すことができますが、雑所得となることで、損失を繰り越すことができなくなります。
少額減価償却資産の特例が適用されない。
「事業所得」で青色申告を行っていた方は、少額減価償却資産の特例を適用することにより、30万円未満の資産について即時に全額償却することができました(年間300万円まで)。
雑所得となることで、少額減価償却資産の特例が利用できなくなります。
事業所得の専従者給与や専従者控除が利用できない。
同一生計の親族に対する給与は原則として必要経費になりませんが、
「事業所得」で青色申告を行っていた方は、青色事業専従者給与として特例が認められています。「事業所得」で白色申告を行っていた方は、専従者控除が特例として認められております。
一方、雑所得には特例がないので同一生計の親族に対する給与は必要経費になりません。
雑所得の損失は他の所得と損益通算ができない。
損益通算とは、簡単に言うと他の所得の黒字と赤字を相殺することです。
例えば、給与所得300万円で、副業の「事業所得」が100万円の赤字の場合は、給与所得と「事業所得」を相殺(損益通算)することで合計所得金額が200万円になります。給与所得は既に年末調整で源泉徴収されているため、「事業所得」が損失の場合は損益通算することで給与の所得税還付を受けることが可能です。
「事業所得」と異なり「雑所得」の金額の計算上生じた損失の金額は、他の所得の金額と損益通算ができないので、「事業所得」の場合と異なり、給与の所得税の還付を受けることができなくなります。
副業の所得が事業所得ではなく雑所得に該当する方は下記ご参照ください。
「雑所得(業務に係る雑所得)」の注意点(請求書や領収書等の保存等)【令和4年分以降】
業務に係る雑所得について、その年の前々年分の収入金額によって手続等が見直されたので注意が必要です。特に前々年分の業務の収入金額が300万円超の場合は請求書や領収書等の保存が必要となります。
前々年分の業務の収入金額が300万円以下の場合
現金主義による計算の特例適用が認められました。
現金主義とは、総収入金額および必要経費に算入すべき金額を現金などで受け取ったもしくは支払った日に計上できるというものです。
例えば、令和4年12月の売上が令和5年1月に入金された場合、通常は売上が発生した12月に売上計上(発生主義)しますが、現金主義では入金された1月に売上の計上を行うことになります。
現金主義による計算の特例を適用する場合は確定申告書に特例を受ける旨を記載する必要があります。
前々年分の業務の収入金額が300万円超の場合
請求書や領収書等の保存する必要があります。令和2年度に雑所得の業務で得た収入が400万円なら、翌々年に当たる令和4年分の確定申告において、領収書などの保管義務が生じます。
保存期間は、確定申告期日(翌3月15日)の翌日から5年間となっています。令和4年分の確定申告については、令和5年3月15日から5年間保存する必要があります。
前々年分の業務の収入金額が1,000万円超の場合
請求書や領収書等を保存し、さらに総収入金額や必要経費の内容を記載した書類(収支内訳書など)を確定申告に添付する必要があります。
まとめると下記表となります。