一括償却資産で償却資産税を節税しよう!
償却資産税とは
償却資産税とは、簡単にいうと、土地や家以外の事業用の有形固定資産に課される税金で、固定資産税の一部です。
12月頃に事業所がある市町村から償却資産税の申告書が届いているかと思います。
事業者が1月1日現在に所有する償却資産について申告し、その申告書をもとに市町村で税額を決定します。決定後に市町村から4月頃に納税通知書が送付されます。
償却資産税は下記式で算定されます。
課税標準額(1,000円未満切り捨て)×標準税率(1.4%)=償却資産税(100円未満切り捨て)
課税標準額が150万円未満の場合は原則として償却資産税は課されません。
課税標準額とは1月1日現在に所有する償却資産の評価額をすべて合計した金額です。
取得価額が10万円以上の減価償却資産は通常、定額法や定率法で法定耐用年数に応じて償却(費用化)することになります。10万円以上の減価償却資産でも取得価額の金額によっては、「一括償却資産」、「少額減価償却資産」として償却する方法が認められております。
一括償却資産と 少額減価償却資産
取得価額が20万円未満の減価償却資産については「一括償却資産」として3年間で毎期均等償却することができます。
取得価額が30万円未満の減価償却資産については「少額減価償却資産」として取得時の年度に全額費用処理することができます。(青色申告者のみ)
「一括償却資産」、「少額減価償却資産」を比較すると、一見すると「少額減価償却資産」として当期に全額費用処理し、法人税や所得税を減額できるので有利になるのでは?
と思われるかもしれませんが、「少額減価償却資産」として償却した場合は、償却資産税の対象となってしまいます。
同じ資産でも償却方法により償却資産税の対象になる場合とならない場合はありますので注意が必要です。
例えば、145,000円のパソコンを20台購入し、「一括償却資産」と処理した場合、資産の取得価額の合計額が290万円となりますが、償却資産の対象とならないので償却資産税はゼロとなります。
一方、「少額減価償却資産」として償却した場合は、償却資産の対象となりますので、大雑把に計算すると初年度は290万円×(1-減価率0.781÷2)×1.4%=24,700円程度の償却資産税が発生することになります。
さらに、法人税、所得税では償却済みであっても、償却資産では除却等をしない限り「取得価額×5%」で評価され続け、毎年償却資産税の課税が継続することになります。
「少額減価償却資産」は、取得時の年度に即時に全額費用化でき、法人税、所得税の税額を減少させるというメリットがありますが、償却資産の対象となり、資産を除却等するまで、償却資産税の課税対象となります。
償却資産税は業績が悪化し、赤字になっても納税する必要がありますので、「一括償却資産」を選択した場合が長期的に見て節税になる場合もあります。
下記のような場合は、「一括償却資産」を選択することにより節税になる場合がありますので検討されてはいかがでしょうか。
・償却資産の課税標準額が150万円以上であり、すでに償却資産税を納税している場合。
・償却資産の課税標準額が150万円に近い場合。
・事業年度が1年の会社で少額減価償却資産の取得価額の合計額が300万円を超えている場合。
参考までに償却資産税の申告でよくある質問について記載いたします。
Q1. 法人が決算対策等の理由で取得価額が10万円未満の資産を固定資産として処理した場合は、償却資産税の申告対象となりますか。
Answer:償却資産税の申告対象になります。
Q2. 1月の償却資産税の申告時点では一括償却資産で処理していたので、償却資産の対象としていなかったのですが、決算時点で少額減価償却資産として処理した場合はどうなりますか。
Answer: 少額減価償却資産として償却資産の申告の対象となりますので、償却資産の修正の申告書を提出する必要があります。修正の申告書の提出により追加課税が行われます。
逆に1月の償却資産税の申告時点では少額減価償却資産として処理し、決算時点で一括償却資産として処理した場合は減額の修正の申告書を提出する必要があります。
Q3. 償却資産の取得価額の申告は税込み(消費税込み)で記載すべきですか。
Answer: 会計処理で税込経理をしている場合は、消費税を含んだ税込みで記載し、税抜経理している場合は消費税を含まない税抜きで記載することになります。
Q4. 所得税の確定申告で事業専用割合が100%でない資産は、償却資産の取得価額も事業専用割合を乗じて申告してもいいですか。
Answer: 事業専用割合を乗じて申告することはできません。
取得価額を事業専用割合に按分して計算することはできないので、取得価額の全額が償却資産の対象となります。
Q5. 償却資産の申告を期限後に行った場合や修正の申告書を提出した場合は、過少申告加算金や延滞金は発生しますか。
Answer: 償却資産税は賦課課税方式を採用しているので、期限後申告や修正申告の場合でも不申告加算金、過少申告加算金や延滞金の発生はないです。
ただし、正当な事由がなく申告をしなった場合には延滞金が課される可能性や10万円以下の過料が適用される可能性がありますのでご注意ください。